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「我が文明:グレイソン・ペリ-」「パッション・コンプレックス」(金沢21世紀美術館)
 先月25日に金沢21世紀美術館で「我が文明:グレイソン・ペリ-」「パッ
ション・コンプレックス:オルブライト=ノックス美術館コレクションより」展を
鑑賞しました。諸事情により大変遅くなり、一度は書くのをやめようと思って
いましたが、記録のために感想を書きます。
 「我が文明:グレイソン・ペリ-」はすでに終了しています。「パッション・
コンプレックス」は11月11日(日)まで開催中です。いま詳しい内容や批評
を読みたくないという人はここから下は読まないでください。




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 今もあちこちに武家屋敷が残る加賀百万石の城下町・金沢。ここに金沢
21世紀美術館が開館して3周年を迎えたという。私がネットで下調べをした
限りでは、色々面白い企画をやっていて来館者の評判も良さそうだった。
しかし自宅からは遠くしょっちゅう足を運べない所なので、夏休み期間に上記
2つの大きな企画展の会期が重なっているのを狙って遠征した。

 JR金沢駅からバスに乗って、デパートやオフィスビルが立ち並ぶ金沢の
中心街・香林坊のバス停を降りて歩くこと約10分。妹島和世と西沢立衛の
設計によるガラスを多用した円形の建物が現れた……、と思ったら、なんと
建物の壁面が朝顔で覆われていた。なんでも「明後日(あさって)朝顔プロ
ジェクト2007」の一環の展示(?)のようである。それを見て、実習室のベラン
ダに朝顔を植えたいと言って実行してしまった、とてもかっこいい(?)、今は
亡き私の大学時代の後輩を思い出した。

 他の美術館の規則正しい動線に慣れてしまった私は、入館してしばらく道
に迷った。建物はガラスを多用しており、館内が明るかったのが救いだった。

 まず、「パッション・コンプレックス」から。
 金沢市の姉妹都市であるアメリカ・バッファロー市の、オルブライト=ノッ
クス美術館は、常にコンテンポラリー・アートの作品を収集している美術館
だそうだ。今回はそのコレクションの一部が展示されていた。
 絵画・写真・立体・映像など多岐にわたる作品が展示されていたのはよ
かったが、好き嫌いは勿論のこと、興味を持てる・持てないが私の中でかな
りはっきり分かれてしまった。

 私にとって「好き」「興味を持てる」「今後も忘れないであろう」作品をいくつ
かあげてみる。ダン・フレイヴィンの蛍光灯を使い美しい光を放つミニマリズ
ムの作品、モナ・ハトゥムの自身の居場所=地球の不安定さを示すような
砂地をバーでひたすら掃き清める作品、自画像について新しい解釈を提示
したジリアン・ウェアリングとジョン・コプランズの作品。特に自画像の作品は、
ウェアリングが家族の古い写真そっくりに変装し(しかもいくらか自身の影が
感じられる森村泰昌と違って、ウェアリングの場合は精巧に変装しきってい
る)、コプランズは自分の身体の一部分(手や足など)を毛穴、体毛、しわな
どまで剥き出しにしてみせる。これらは高い技術があってこそ出来る作品で
あり、その技術とテーマを上手く融合させたという点で私は高く評価する。

続いて「我が文明:グレイソン・ペリ-」を鑑賞。

 グレイソン・ペリーは、現代社会の諸テーマを主に陶芸作品で発表してきて
いるが、陶芸に限らず彫刻、写真、版画、服のデザイン、果ては女装まで、
様々な技法で強烈なインパクトを与え続けている作家である。
 彼が主に手がけている陶芸作品は、ありがちな「工芸作品」の枠におさまら
ない。表面に直接ドローイングしたり、写真を転写したり貼り付けたり、文字を
書き込んだり。そのイメージがあってこその作品である。彼自身、性や暴力や
政治や社会批判といったテーマとセラミックが融合しているところに自分の作
品があると言う。

 展覧会ポスターの表面を飾った陶芸作品「何がいやなのか?」は、金ピカの
壷にブランド物の靴や鞄などの消費財を描き込み、現代の消費社会を皮肉っ
ている。また「美術館は君に良くないよ」という作品は、壷にタイトルの文がそ
のまま日本語で書かれている。さらにこれと同様のメッセージが込められてい
る作品として「テート・ギャラリーの前に立つクレア」という写真作品がある。
ここではペリー自身が女装し、美術館の前で「NO MORE ART」と書かれた
プラカードを持って立っている(ちなみにクレアというのは、彼が女装した時の
呼び名である)。

 このように、彼は世相を大変鋭くとらえ、挑発的で、アイロニーとユーモアに
富んだアーティストであり、それが彼の一番の特長だと思うが、決してそれだ
けではないのを見せつけたのは、今回展示されていた「陰翳礼賛」である。こ
れは言うまでもなく谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」へ捧げる作品である。イメージの
重なりが、彼の壷の作品の中でもひときわ美しかった。

 彼が影響を受けたアーティストとして、ヘンリー・ダーガー(当ブログ内の記事「ヘンリー・ダーガー展」を参照されたし)
の名が挙げられていた。確かに、ある意味猥褻(?)な印象を受けるイメージ、
強烈な創作のエネルギー、社会への関わり方など、なるほどと思う点もあるが、
ペリーの方がずっとアーティストとしての自覚があるし、今はより一層批判の
材料に事欠かない世の中になってしまった。今後、彼の創作活動はますます
過激なものになっていく予感がするし、また、そうあってほしいと思う。
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by imymegallery | 2007-09-12 22:39 | 展覧会の感想
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