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※頻繁に変更されますので、まめにチェックしてくださいね!

「麻田浩 展」(京都国立近代美術館)
 先月31日に京都国立近代美術館で「麻田浩 展」を鑑賞しました。諸事情により
遅くなりましたが、感想を書きます。いま詳しい内容や批評を読みたくないという
人はここから下は読まないでください。
 なお「文承根+八木正 1973-83の仕事 展」も同時に開催されております。どちらも
9月17日(月・祝)までです。ご覧になりたい方はお早めに。



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 麻田浩(1931-1997)は、日本画家・麻田辨自の次男として京都市に生まれた。
兄・麻田鷹司も日本画家であった。麻田浩は1954年、23歳の時に新制作協会展
に初入選を果たし、1963年31歳の時初個展を開催したのを機に画業に専念する
ことを決意した。以後画風を変えながら亡くなるまでの画家としての軌跡の
全容を初めて世に知らしめたのが今回の回顧展である。

 麻田浩の初期の作品群は、初期のアンフォルメルへの志向から、やがてシュル
レアリスムへと徐々に傾斜していくのだが、全体としては試行錯誤を重ねて
いるのが強く感じられるものである。ここには当時の京都における気鋭の
作家たちからの影響もあっただろうと思われる。

 そして1971年に、麻田浩はパリへと旅立った。しばらくは制作に集中できない
日々が続いたようだが、フリードランデル(Johnny Friedlander)の主宰する
版画研究所で版画制作を開始してから、本格的に制作に集中できるように
なったようである。私には、それとともに彼の作品は大きく飛躍を遂げたと
思った。彼のエッチングによる作品「赤い円」「原風景」は色味を抑えた、
乾いた赤土や砂で出来ているような世界の表現がとても良い。
 それとともに、油彩でも「原風景」をテーマとした一連の大作の制作が
始まった。特徴的なのは、縦・横同じ寸法の正方形、それも1辺が1mを
超えるような大作を多く描いていたことである。さらに、サイズが大きく
なっても大味にならず、水滴や地面のひび・くぼみ、鳥の羽根や昆虫などで
構成した引き締まった画面にしていることに驚異すら感じた。こうして独自
のスタイルを確立した作品がヨーロッパで高く評価されたのも、当然だと
思った。しかし同時に、心身ともに大変消耗したであろうということも、
容易に想像できる。

 1982年に帰国後、麻田浩は京都市立芸術大学の教授に就任すると同時に
自らも自身のテーマを深めるべく制作活動を続けた。パリでの作品の大きな
テーマであった、自然物で構成された「原風景」は、人工物を加えた「原都市」
へと発展していった。それはさながら廃墟や、古い標本が転がっている
実験室のようである。
 また、やはりヨーロッパの価値観にどっぷりつかったきたからであろうか、
キリスト教的主題にもより一層傾倒していくことになった(1991年に麻田浩
は、洗礼名ジャン・ピエールとして洗礼を受けている)。その代表作と
言えるのが大作「地・洪水のあと」である。1986年、京都の画廊でこの作品
1点のみを展示した個展が開かれたという。そして、この作品の裏側には、
フランス語で旧約聖書の「伝道の書」第1章の冒頭部分が書かれた。
 私はキリスト教者ではないので、あくまでも私個人の感想だが、この
「地・洪水のあと」には、洪水のあとにも新たな生命体がうごめいている
ように感じた。
 あと「御滝図」(兄に)という作品は、日本画でよく描かれる流れ落ちる滝
を描いたものであるが、これは単に日本画家であった兄へのオマージュという
意味を超えて、日本の風景を麻田浩風に、新たなる世界を示した作品だと
思う。

 1997年、麻田浩はアトリエにて自ら命を絶ってしまった。今回の展覧会では
アトリエに残されていた未完の作品「源(原)樹」も展示されていた。木の幹には
蛇が巻きついていて、画面にはいくつもの球が漂っていた。この絵を見た時、
私は「完成させてほしかった」と思った。疲れ果てていたとしても。

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(9/15追記)
・美術館の公式サイト上で「電子メール討論会」なるものが行われています。
 「この作品が展示されていない!」など、興味深いメールが集まっており
 ますので読んでみてください。
・この展覧会の最終日、9/17(月・祝)の13:30~17:00に、
 シンポジウム「今、なぜ麻田 浩なのか」が開催されます。麻田浩のことを
 より深く知りたい方は是非行ってみてください。

いずれも詳細は京都国立近代美術館公式サイトをご覧ください。
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by imymegallery | 2007-09-14 20:57 | 展覧会の感想
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