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「天体と宇宙の美学」展(滋賀県立近代美術館)その2……講演会「天体の図像学」
 私が「天体と宇宙の美学」展に行った日は「天体の図像学」と題する講演会があった
(講師:藤田治彦・大阪大学大学院文学研究科教授)。西洋における美術作品において、
天体、特に太陽と月の描き方においてある特徴が見出されるということがこの講演の
テーマである。以下、主な内容をつらつらと書き留めておく。

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・パルテノン神殿の東破風(現在はほとんど原型をとどめない)は、南端に太陽神ヘリオス
 の戦車の彫刻、北端に月の女神セレネと馬の彫刻が配され、破風の底辺はオケアノス、
 つまり海である。これは朝になると太陽が海面から姿を現すということを表現している。
 そしてそれと対をなすものとして月がある。豊かな想像力による、宇宙の壮大な表現で
 ある。

・具体的なキリスト磔刑像は、はじめからあったわけではない。ナポリ大聖堂内の洗礼堂
 の天井モザイク画は、キリストのモノグラム(キリストのギリシャ語綴り
 ΧΡΙΣΤΟΣ)の最初の2文字ΧΡを組み合わせたものである(これが十字架にも見
 えなくもない)そして左右にΑとωを配し、ヨハネの黙示録の「私はアルファであり、
 オメガである。はじめであり、終わりである。」を表している。

・また、サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂のモザイクは金色の十字架の交差点に
 キリストの顔が小さく描かれている。

・「天の聖壇」をテーマとした造形の例として、フランス・メッスのクールドール美術館
 所蔵の、メッスの教会の天井の要石(かなめいし)彫刻。要石のひとつには巫女とアウ
 グストゥス帝が描かれ、もうひとつには聖母子が描かれている。聖母は「黙示録の女」
 の特徴も備えた描写がされている。その描写とは、太陽の衣をまとい、その衣の裾で
 三日月を踏んでいる、というもの。

・ランブール兄弟によって創られた「美しき時祷書」にも「天の聖壇」の挿絵がある。
 上の例と同様のモチーフが描かれている。文字と挿絵、装飾のデザイン、レイアウトが
 優れている。

・また、ランブール兄弟と同時期の画家による「ブシコー元帥の時祷書」の中の「聖母
 の前で祈る元帥夫妻」も同じテーマ。ただしこの絵では「巫女とアウグストゥス帝」の
 代わりに元帥夫妻が描かれている。それからランブール兄弟は代表作「ペリー公の
 いとも豪華なる時祷書」で巫女とアウグストゥス帝を別画面にした3画面による
 「天の聖壇」の組絵を描いている。

・キリストの磔刑像が具体的に描かれるようになると、そこにも、十字架の左側に
 不気味な光を放つ太陽が、右に黒い月が描かれるようになった。太陽の出現の根拠は
 福音書の、正午から三時まで全地が暗くなったという記述に求められるが、月に
 関する記述はないので、太陽と月を並べて描く、あるいは両天体を対照的に配置する
 キリスト教以前からの造形の伝統などの理由の方が大きいかもしれない。

・ランブール兄弟の月暦画、12か月の風俗を描いたものであるが、太陽を渦巻き、回る
 ものとして表現している。これはケルト的な表現で、この絵はギリシャ・ローマの
 絵画表現とケルトの装飾表現を併用したもの。

・フランドル絵画は、西洋美術史上例に見ない絵画技法と様式の進化を遂げたといえる。
 中でもヤン・ヴァン・エイクは、キリストの磔刑場面の描き方に特徴がある。彼は
 そこに太陽と月を同時に描くというそれまでの形式をとらず、白昼の磔刑の場面を、
 福音書の記述を詳細に至るまで視覚化した。しかしながら、画面の左に太陽、右に月
 という形式を、太陽が画面の外、左側に輝いていることを暗示し、右側に白昼の淡い
 月を描くことで表現している。

・17世紀初頭のアダム・エルツハイマーの作品「エジプトへの逃避」。夜の風景を描いた
 ものであるが、星座、天の川など、天空を細密に表現している。
 さらにクロード・ロランはそれまでの形式を脱し、太陽を中央に置いた風景画を描いた。

・同じく17世紀、ルドヴィコ・チーゴリはサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂パオリーナ
 礼拝堂の「無原罪の御宿り」の聖母の足下に、クレーターで覆われた月を描いた。
 チーゴリはガリレオ・ガリレイの友人で、望遠鏡で観察した月という科学的表現と
 宗教的表現を混在させた。

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 図版など詳細は「天体の図像学」(藤田治彦 著、八坂書房)をご覧ください。
(こちらに説明は書ききれないので。すみませんです)
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by imymegallery | 2007-10-16 23:02 | 展覧会の感想
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