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「ジグマー・ポルケ展」
 先週の日曜日に国立国際美術館(大阪市)で「ジグマー・ポルケ展」を鑑賞
しました。この展覧会は6月11日(日)までで開催されるので、いま詳しい内容
や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。なお本展覧
会は東京では既に会期を終えており、大阪での展覧会が最終となります。

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 ジグマー・ポルケは、いま世界でもっとも注目される画家の1人であるという。
彼はポップ・アート、抽象表現など種々の手法を自在に使いこなし、人間、神話、
宇宙などあらゆる世界を表現している。彼の絵は網点による絵画が特徴だそう
だが、むしろ網点を用いないか、あっても他の技法と組み合わせて部分的に
使っている作品の方が、私としては作品の厚みを感じるので好きである。

 「メネラオスの夢 Ⅰ~Ⅳ」の4点は、特にⅡの画面を覆うように燃えさかる炎が
美しい。メネラオスは叙事詩「イーリアス」にも描かれているトロイア戦争を戦った
スパルタの王の名前である。Ⅱの火の海は「イーリアス」に記されている、城門を
破られ火の海となったトロイアを見ているようである。そしてこの絵もⅠからⅣへ
と進むに従い闇に包まれていく。

 他の作品の中でも「彗星」「否定的価値Ⅰ~Ⅲ」といったほとんど闇に包まれた
絵がある。しかしどの絵もその闇の向こうには「何か」が見える。

 「牡羊座の満月」と題された40点の版画作品は、学校で授業中にノートに漫画を
描いている子や、おとなしくて目立たないけれど絵は大好きで美術部に入っている
ような子の、絵に対する思いを代弁するような純粋さを感じた。しかし描かれている
世界は圧倒的に独自性の強いフォルムによって構成されたものである。

 可愛らしい柄のプリント布地も、ポルケの手にかかれば立派なキャンバスとなり、
その愛らしさが見事に表現されていたのが「結合」だろう。この作品には金色の星
をちりばめているが、ポルケの作品にはメタリックな画材を使った作品も多く、それ
によって神秘性を与える結果となっていると思う。「魔方陣」の一連の作品は、下地
にメタリックなアクリル絵の具を塗っている。そうすることによって(ある規則性があ
るとはいえ)数字の羅列に過ぎなかった魔方陣にラメ色の輝きを与えている。

 いずれにしても、通俗的なものと崇高なものを描き分けたり、融合させたりして
しっかりと自身の思想・価値観といったものを作品に定着させているところが彼の
優れたところであろう。
by imymegallery | 2006-04-30 22:11 | 展覧会の感想
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