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ネタばれ注意「"世代を超えて"いのちを考える-西村正幸とともに-」
今週の日曜日に伊丹市立美術館で「"世代を超えて"いのちを考える
-西村正幸とともに-」展を鑑賞しました。ので感想を書きます。
この展覧会は8月5日(日)まで開催中です。いま詳しい内容や批評
を読みたくないという人はここから下は読まないでください。




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 伊丹市立美術館は、美術と社会との関わりを考えることをテーマに、挿絵、特に
諷刺画のコレクションをするとともに、2001年から「いのちを考える」というコン
セプトで現代美術作家による展覧会とワークショップを続けているユニークな美術館
である。今年は西村正幸を迎えている。

 西村正幸は、聖書や現代の社会問題をモチーフとした作品を創っているそうだ。
今回の展示では、家族を主なテーマをしている。

 展示は2階の南北2つの展示室に分かれていた。まず南展示室から。「残された家族
(イラク・チルドレン#2)」は、家型・王冠型に切り取られた黒板を壁に配置し、以下の
ような説明をつけてあった。
「黒板に、チョークで、家族との楽しく平和な思い出を描いてみてください。描くとこ
ろがなければ、黒板消しで前の人が描いた絵を消してから描いてください。」
 その下にやや小さめの字でこう付け加えてあった。
「イラクでは、黒板消しで簡単に消せるように、(爆撃などによって)子どもたちの
いのちが失われています。」
 これを読んで、私は黒板消しを使うことができなかった。鑑賞者によって描かれた
人や動物たちの絵のわずかなすき間に、小さな女の子の顔を描いた。

「スターバト・マーテル」のシリーズは、#3;"ママ…パパ…"、#4;"涙の日"、
#5;"クライ・フリーダム"の3つの十字架の形をしたオブジェが印象に残った。桧の木
で作った十字架の中に電球を入れ、タイトルが書かれた和紙を貼った枠をかぶせて、
楠の枝を立ててある。墓標を思わせるこの十字架の中に、か細い木の枝を立てる
ことで、人の命のはかなさと、それでもなんとかして命のともしびを守ろうという、
祈りのようなものが表現されていると思った。

「カナ;2006年7月30日の記憶」のシリーズでは"消え失せた家族 #2"を見てショックを
受けた。家型の銅に緑青を塗りたくられた作品は、まるで大雨とともに何もかもが
消え去っていくように見えた。

 そしてまた家型の黒板が並ぶ。この「家族の記憶」シリーズにはこんな説明が
添えられていた。
「IRAQ BODY COUNT」のサイトで公開されているイラクで亡くなった民間人の最小限、
最大限の人数です。
 約1ヶ月前の死者のかずが毎日更新されています。
 米国政府が、テロリストを殺害したとして公表している内の多くは、民間人の
女性と、そして子どもたちと言われています。
 死者の数などカウントしたくありませんが、毎日数を書き替えています。」
 ちなみに私が見た時の人数はMin66807、Max73120であった。

 そしてその黒板の下の方には、日本国憲法第9条を書き写すための机があった。
 早速椅子に座って書き写してみた。
 私が条文を書いた紙は、ほかにここを訪れた人が同様に書いた紙とともに、
小さな紙に縮小印刷されて、あとで訪れる人が持って帰れるようになっていた。
 そこには、書くことによってこめられた様々な思いも集められている。


 北展示室は、ワークショップ「黒板家族を作ろう!」で作られた作品が
展示されていた。
 色々な大きさの黒板を作って、切ったりつないだりして家族や身近な人の
人形を作り、その人のことを思い浮かべながらチョークで表情を描き入れ、
自分だけの黒板家族をつくる、というものだった。
 作品を見て思ったのは、予想していた以上に力作が多かったということだ。
理由は、1つには家族の人数が随分多かったことがあげられる。4人や5人は
当たり前、動物や植物もいたりする。大家族が多かった。
もう1つは、家の内部まで作り込んでいる人がいたことだ。1階と2階を作り、
らせん階段でつなげるというのは、かなり工作が上手い人でないと難しいことだ。


 けして大きくはない展示ではあったが、コンセプチュアルで、しかも今の社会
問題に切り込んだ作品群であったため、色々と考えさせられるものがあった。
鑑賞してよかったと思う。

※IRAQ BODY COUNT……http://www.iraqbodycount.org/
 日本語による説明ページはこちら(「市民ライター通信」内のページ)
 http://www2.ocn.ne.jp/~mmwriter/new_ver/contents/IBC_background.htm
by imymegallery | 2007-07-28 23:03 | 展覧会の感想
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